青春時代はバブル全盛期だった。
これを言うとバブルを享受した人と思われがちだが、私はバブル的にはアウトサイダーだった。
個人的環境は経済的に豊かでなく、いつもジリ貧だった。
周りの若者たちはブランド服、ブランドバッグに身を包み、セレブな車に乗り、繁華街に繰り出し、グルメに舌鼓し、海外旅行し、あらゆる愉しみを享受していた。
そんな自由狂乱絶頂な男女を指をくわえて見ていた田舎女子。
でも若いから、どうしてもおしゃれだけはしたかった。
お金が無くてもおしゃれするにはどうしたらいいか?
ひねり出した方法が「服を縫う」。
生地を買って自分で縫えば、超格安でハイブランド服と同じデザインだって着られる。
最高の方法をみつけたと思った。
当時、月刊雑誌「荘苑」には素敵な洋服とパターンが数多く掲載されていた。
「荘苑」を毎月購入し、隅々まで眺めて想像を膨らませるのが楽しかった。
しかし実際にやってみると「服を縫う」のは半端なスキルで太刀打ちできないとわかる。
頼りになるのは中学・高校の家庭科授業で習った知識のみ。
そして結果は盛大な失敗の量産。
一番ひどかったのは、ロングフレアワンピースを作った時。
原型からパターンを起こし、お気に入りの花柄生地を型紙からカット。
接着芯を貼り、縫い代の始末をし、肩を縫い合わせ、袖を縫い、襟を作る。
前後身頃の脇部分の胴からスカート裾までの長い距離を縫い合わせようとしたのだが、どうにもきれいに合わない。
何度合わせてもうまくいかず、何がおかしいか気付くまでしばらくかかったが、事実を知って愕然。
まさかの身頃の丈が前後で10㎝ずれている。。。
まさかの型紙の段階から前身頃を10㎝短く間違えて線を引いていた自分。。。
あまりのクリティカルミスに愕然とした。
ショート丈のワンピースなら10㎝違いは早めに気が付いたのかもしれないが。。。
もう取り返しのつかない致命的失敗。
緩やかな角度が付いたフレアスカートは修正のつけようがなく、その「大作」は未完のお蔵入り。
今思い出しても痛すぎる。
他にも生地の性格とデザインが合っていないために着心地が悪かったり、サイズ調整が甘く、シルエットがおかしかったり、縫い方が適当すぎたり、無知なまま勢いだけで作っているせいでまともに着られるものを完成させた試しがなかった。
節約の為に生地を買って作っているのに、ほとんどが無駄になり、使い道のないゴミを増やす始末だった。。。
私には技術もセンスもない。そしてお金もない。
ガッカリしすぎて、もう服を作るのはやめようと思った。
一から服を作るのは危険なので、もうそこには近寄らないようにしていたけれど、失敗の量産はいろいろな縫い方やちょっとした作り方のコツだけは、どうやら身についていた。
歳を重ねても相変わらず豊かとは言えない人生を送っていたけど、身近にミシンと手芸材料だけには恵まれていた。
だから常に何かを作っていた。
洋裁への劣等感と挫折感は居座っていたけど、何かを縫っている最中は楽しい。
ある時ふと居直ってしまった。
型紙から服を作るのを「正」と思うのはやめた。(本当は「正」)
しかし下手くそでも縫う権利はある。
縫製のセンスがないならもう肩の力を抜いて、既製服に乗っかってしまおう。
服を縫う事を職業としている人たちが縫い上げた既製服。
きれいに仕上げられたものを素材ととらえ、どんどん活用してしまおう。
既にある完成品をベースにして、自由にカスタマイズを愉しむ。
リメイクは気楽で軽やか。
既製服にちょっとプラスして縫う。
Plus-Nu
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